2016年 記事一覧
ありがたい贈りもの
黒龍酒造本社蔵の酛場には、酒造りの神様を祀る神棚があります。その神棚に納められているのが、奈良県の大神神社(おおみわじんじゃ)から頂く、赤い帯の御幣(ごへい)と三輪大明神のお札です。
大神神社のご祭神である大物主大神(おおものぬしのおおかみ)は、杜氏の祖とされる高橋活日命(たかはしいくひのみこと)が大物主大神の神助によって美酒を醸したことから、酒造りの神様として広く信仰を集めています。毎年11月14日には、大神神社を会場に「醸造安全祈願祭」(酒まつり)が催され、全国各地の蔵元や杜氏が式典に参列し、酒造りの安全祈願を行います。この式典を終えると、いよいよ各地の蔵元へ向けて、写真の御幣とお札に加え、神社の御神木で作られる「志るしの杉玉」が送られるのです。
昨年末に弊社へ届いた御幣や杉玉は、早速新しいものに取り替えました。酛場の奥で私たちを見守ってくれる神様に新年のご挨拶を済ませた蔵人たちは、今日もそれぞれの仕事場で、一生懸命酒造りに励んでいます。
今年も大事なく1年を過ごし、良い酒を造れますように。
明けましておめでとうございます
旧年中は、皆様方に日本酒「庭のうぐいす」をご愛顧いただきまして
誠にありがとうございました。
また旧年中は、お取扱い頂いている酒販店様、飲食店様にはご不便やご迷惑をお掛けする場面が
あったかもしれませんが、都度温かいお声がけをいただき、心より深謝申し上げます。
昨年は、いわゆる「先祖代々大切に使ってきた蔵」を老朽化を理由に解体することになったり
社員や私自身も体調を壊した時期もあったりと、なにかと大変なこともありましたが、皆様からの
お力添えが我々の活力になり、社員一同新たな気持ちで新年を迎えることができました。
本当にありがとうございました。
秋から始まった酒造りは、今のところ予定通り、大きなトラブルもなく順調に進んでいます。
大晦日と元旦はいったん仕込作業をお休みし、蒸しは2日から仕込作業は3日から通常業務に戻る予定です。
営業部は5日からスタートします。
今年も「元気」だけは失わず日本酒の魅力を伝えていきたいと思いますので
どうぞ本年も一層のご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます
平成28年1月1日
山口酒造場
代表 山口哲生
つかの間の雪景色。
先月24日に日本を襲った大寒波の影響により、一気に真冬の寒さが訪れた福井ですが、大寒波の通り過ぎた26日以降は、気温が上がって晴れ間がのぞき、積もった雪もたちまち溶けだす例年にない気候となっています。積雪も大変遅く、県の地方気象台が福井市内で初の積雪を観測したのは1月19日と、1978年の1月3日の記録を16日も更新。福井県の特産品である梅や水仙の開花の早まりや、スキー場の開業が遅れるなど、様々なところで暖冬の影響がみられました。
24日から25日にかけて積もった黒龍酒造母屋屋根の雪は、冬にしては温かい気温と晴れ間の日差しですっかり溶けてしまいましたが、冬はまだまだこれからです。しんしんと雪が降ればまた、雪化粧を纏った趣ある母屋の姿を見せてくれることでしょう。
庶民に親しまれた通い徳利
一升瓶が普及する明治後期以前に、庶民の間でお酒を入れる容器として親しまれていたのが「通い徳利」と呼ばれる陶磁製の徳利です。
当時は、酒屋から貸し出された通い徳利を容器とし、注いだ量に見合った金額を支払う量り売りのスタイルが一般的でした。貸し出された徳利の側面には、店の屋号をはじめ、住所やお酒の銘柄が書かれ、店の広告としても一役買っていたようです。
弊蔵母屋の倉庫を覗くと、屋号の石田屋と書かれた通い徳利や、店先でのお酒の販売、清酒の運搬や貯蔵用の容器に使われた「瀬戸樽」が、今も大切に保管されていました。
残された道具を眺めながら、当時の黒龍酒造の営みを想像してみると、埃をかぶった徳利や樽のひとつひとつが、まるで宝もののように思えてくるから不思議です。
写真右:蔵の棚に残された通い徳利 写真左:無地の瀬戸樽
啓蟄(けいちつ)《二十四節気》
3月5日は二十四節気でいう「啓蟄(けいちつ)」の日です。
太陽黄経345度。
冬ごもりをしていた虫たちが、春の気配を感じて土から出てくる頃です。
春雷がとどろき、日差しも暖かくなる時期です。
店には山菜が並び始めます。
春の食材に舌鼓ながら、日本酒をいただきます。
冷酒をより贅沢な一杯へ。「黒龍 平盃」「黒龍 酒杯」登場!
桜舞う4月。黒龍酒造から、冷酒をより贅沢に楽しむ2種の酒器が誕生致しました。
1つは、日本六古窯(にほんろっこよう)のひとつである福井県丹生郡越前町の地で、「竜仙窯」窯元の岩間竜仁氏の手により生まれた「黒龍 平盃」(こくりゅう ひらさかずき)です。「冷酒をゆっくりと、贅沢に味わってほしい。」という思いを形にすべく何度も打合せを重ね、陶器では困難とされる薄作りの平盃が実現しました。手仕事ならではのあたたかみを感じる逸品です。
もう1つは、日本屈指のプロダクトデザイナー「深澤直人」氏デザインの「黒龍 酒杯」(こくりゅう さかずき)です。深澤氏は、「±0」や「無印良品」などで多彩な製品デザインを手がけ、グッドデザイン賞審査委員長も務められています。うすはりグラスならではの極薄の飲み口と、手のひらに収まる小柄なサイズにより、手のぬくもりで変化する、冷酒の繊細な香味をお楽しみ頂けます。
気温もだんだん温かくなり、冷酒がおいしい季節となって参りました。今宵は肩の力を抜いて、「黒龍 平盃」「黒龍 酒杯」で、贅沢な一杯を楽しんでみませんか。
「Sake FLAT project」の皆さんが黒龍酒造を訪れました。
4月13日(水)、「Sake FLAT project」の一行が、黒龍酒造へいらっしゃいました。
「Sake FLAT project」は、株式会社花山のお取引酒販店と蔵元の20~30歳代のスタッフで構成される組織で、日本酒業界の若手世代のつながりや情報交換を促進し、若者の日本酒市場への取り込みを目的として2015年に設立され、これまでに定期会議や勉強会、イベントへの出店等を行っています。
今回は、加盟メンバー25名の方々に黒龍酒造での酒造り工程を見学していただき、その後の定期会議で、「Sake FLAT project」の今後の取り組みについて話し合われました。若いスタッフならではの発言が多く、日本酒未経験者視点での意見が飛び交っていました。
翌日には、黒龍酒造の契約農家でもある大野市阿難祖地頭方地区の農事組合法人味の郷を訪問し、福井の自然や風土にも触れていただきながら、今春植えられる酒米五百万石の苗の生育状況、黒龍酒造試験田の圃場の視察を行いました。視察後は、農家の奥様方が早朝から握ってくださった地元コシヒカリのおにぎりや、大野市特産の里芋を使用した甘煮を楽しみました。
同じ業界の若い方々との交流を深めたことにより、未来に向けた若い世代の市場開拓を考える一方で、私たちと繋がりの深い地元に残る自然や文化を守り、伝えていくことも地酒蔵としての大きな使命だと改めて感じました。
蔵元日記5月号
若葉の緑が目にも鮮やかなこの頃、滋賀県東近江市ではあちこちで田植え風景を見かけるようになりました。私共喜多酒造でも、5月上旬にかけて向いの自社田んぼに酒造好適米「吟吹雪(ぎんふぶき)」の作付けをおこないます。
「吟吹雪」は、母「山田錦」・父「玉栄」として育成された滋賀県生まれの酒造好適米です。近年では、その特性を評価され、滋賀県下の多くの酒蔵でも使われています。喜楽長でも、この夏に発売の新商品「特別純米 若苗(わかなえ)」の掛米に用いました。
滋賀県生まれの「吟吹雪」、その特性を生かしつつ、より良い喜楽長をお客様にお届けしてまいります。
「九頭龍」から夏のお酒が発売されました。
山々の緑も一層深くなり、季節も春から夏へと移りかわろうとしています。黒龍酒造では5月に2015BYの甑倒しを迎え、蔵内の仕込みが1本1本終わるごとに、蔵中に漂っていた吟醸香が少しずつ落ち着いていきます。今年の造りも残すところあと僅かですが、来るべき夏に向けて、黒龍酒造では初の夏酒となる「九頭龍 純米夏しぼり」を新発売致しました。
立夏過ぎに搾った「九頭龍 純米」原酒は、黒龍酒造の純米酒らしいほのかな米の旨味を残しながら、搾ったすぐの爽やかで瑞々しい味わいと原酒のキリッとした飲み口が特長となっています。デザインも緑を基調とした初夏らしいイメージに仕上がりました。
酒造り中、蔵人にも好評だった「九頭龍 純米」のしぼりたて原酒を、今年の夏はキンキンに冷やして愉しんでみませんか。
阿難祖(あどそ)の「蛍祭り」
福井県大野市の南西部に位置する阿難祖地頭方地区は、集落を見下ろす銀杏峰(げなんぽ)の清らかな山水と、粘土質で栄養のある圃場の地質に恵まれて、五百万石を主とする良質な酒米の産地となっています。そんな阿難祖地頭方地区で毎年6月中旬に行われているイベントが「蛍祭り」です。同地区にある弊社試験田近くの山際から、民家が立ち並ぶ集落までの水路沿いを会場に、地元の方々が中心となって開催しています。
今年は、山から吹き降ろす風がとても強く、夜空を悠々と舞うはずだった蛍たちも、水路沿いの草に必死でつかまり飛び立てない様子でしたが、しばらくして風が止むと、隠れていた草影から顔を出し、その美しく光る姿を見せてくれました。
「蛍祭り」には、弊社の酒米を生産頂いている農家さん達からのお誘いで、弊社社員や県内特約酒販店の方々も毎年参加しており、当日には「黒龍 いっちょらい」をお持ちして、地元の方々に楽しんで頂いています。
大自然の中で、蛍を眺めながら飲む日本酒というのは、夏ならではの風情があってとても良いものです。
山も庭に動き入るるや夏座敷/芭蕉
7月に入り、夏らしい天気がつづいています。喜多酒造では、毎年7月頭の晴れた日に座敷を夏座敷に作り変えます。
襖を簾戸(すど)にかえ、爽やかな風が家を通るようにしますと、すっとむし暑さが遠のきます。
こんな日は、縁側でキリリと冷えた夏酒「びわ湖の夏」を呑みながら、先人の知恵に感心するばかりです。
7月7日は七夕の節句です。
和合・夫婦をテーマとした節句。
牽牛と織姫が年に一度だけ会う伝説に基づいた説話と日本古来の農耕儀礼や祖霊信仰に結び付けたとも言われます。
笹竹に願い事を書いた短冊を吊るしてお祭りします。
元々は、裁縫や習字の上達を祈ることが目的だったようです。
満天の星空の下、日本酒を楽しみましょう。
兼定島の小さなギャラリー
兼定島酒造りの里の新倉庫2Fロビーに上がると、右手の壁面にずらりと並ぶ、10枚の風景写真が目に飛び込んできます。
ここに展示される写真は、弊社広報誌「永」や商品写真を撮影頂いているカメラマンのたとり直樹氏による作品で、福井県内を飛び回って撮影した豊かな自然の姿が、ありのままに映し出されています。
梅雨が明けた7月下旬、涼しげな滝の写真を抱えたたとり氏が、展示物を入れ替えるため兼定島にご来社くださいました。今回展示する写真は、滝そのものの存在感を見る人にストレートに伝えたいということで、あえて季節の色を出さないよう工夫して撮影されたそうです。勢いよく弾ける水しぶきや、流れる水の透明度が印象的な、躍動感溢れる作品となっています。
「写真に写る風景を、実際に見に行こうと思ってもらえるような作品を展示していきたい。」と語るたとり氏の小さなギャラリーを、ご来社の際に是非ご覧になってください。
会長が残した大きな足跡をたどって・・・
8月8日、弊社7代目蔵元であり会長の水野正人が、満82歳をもちまして、天寿を全うし永眠いたしました。弊社と水野家の合同葬という形式で開いた8月10日の通夜、11日の告別式には、地元や遠方より誠に多くの方々にお越し頂きましたことを、深くお礼申し上げます。会長もきっと、会場いっぱいにお集まり頂いた皆様のお顔を見て、とても喜ばれていたことでしょう。
会長に負けないくらいの情熱を持ち、「黒龍酒造の酒造り」を追求して参りますので、今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。最後に、8代目蔵元の水野直人よりお礼の言葉を添えさせて頂きます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「7代目蔵元水野正人は、平成28年8月8日、満82歳にて、まっすぐ歩んだ生涯に幕をおろしました。父は仕事に関してとても厳しい人で、私はいくつになっても叱られていました。
けれどもそれは大切な会社と水野家を守っていこうという思いが強かったからこそなのだと、今なら痛いほど分かります。黙々と働く父の背中は、言葉以上に多くのことを教えてくれました。若い頃から体が強いほうではなかったものの、いつでも力の限りを尽くしてきた父は立派だったと思います。現場を退いてからも会社の行く末を気にかけていました。父に安心して休んでもらうためにも、200年以上続くこの酒蔵をしっかり守り続け、親父の思いを受け継いで頑張って参ります。
素晴らしいご縁を結び父の人生に彩りを添えてくださった皆様へ深く感謝を申し上げますと共に、今後も変わらぬお付き合いを賜りますよう何卒お願い致します。」
黒龍酒造株式会社
代表取締役社長 水野 直人
白露(はくろ)《二十四節気》
9月7日は、白露。
夜の間に気温が冷え込み、草花に朝露が宿る季節です。
太陽の日差しも日増しに柔らかくなり、朝夕は涼しさを感じる季節となります。
呑み切り
毎年、九月の初旬に「呑み切り」を行います。「呑み切り」とは、貯蔵しているお酒を検査するために、タンクの呑口(のみくち)をあけて、酒を出し、鑑定することをいいます。第二の酒造りである「貯蔵・熟成」の状態をみるお酒の品質チェックをここで行う蔵の大切な行事のひとつです。
今年の呑み切りは、技術指導の先生、鑑定官の先生方をお迎えし、杜氏、社員ともにきき酒を行い、品質管理・製造の状態について確認致しました。また、来月から始まる今造りに向けての製造検討等、多くの議論を交わし、今造りの計画がいよいよ決定しました。
もうすぐ、28BYの酒造りが始まります。
おいしいお酒になりますように。
黒龍酒造では、9月26日に初洗いを行いました。いよいよ酒造りのはじまりです。写真は、今期1本目に搾るお酒の酒母となる麹です。弊社では、出麹を終えた麹を麹冷却室と呼ばれる部屋に引きこみ、一定の温度で冷やして品温を落ち着かせ、麹を十分に乾かしてから仕込みに使います。
麹担当の竹本に、引き込んだばかりの1本目の麹の出来を聞くと、今期はじめての麹造りで不安はあったものの、さばけ具合も良く質の良い状態に育ち、これからの酒造りが楽しみだということでした。
生まれたての麹達がおいしいお酒になる。その搾られる瞬間が、今から待ち遠しくて仕方がありません。
寒露(かんろ)《二十四節気》
10月8日は、「寒露」
「寒露」とは、秋の初めに野草に宿る冷たい露のこと。
本格的な秋の到来です。米や穀物などの収穫も忙しさを極める時期。
紅葉も濃くなり、大気の状態も安定し晴れの日も多くなります。
夜月を見ながら、日本酒一杯いかがですか。
「燗酒」の面白さを伝えるために。
朝晩が冷え込む今日この頃、仕事を終えて家路につくと、無性に飲みたくなるのが「燗酒」です。今でこそ、冷やして飲まれる事が多い日本酒ですが、昔はあたためて飲むのが一般的でした。すっきり飲める冷酒と違い、お酒の個性を芯から味わえるのが、燗酒の楽しみです。湯気と共に立ち上がる香りや、じんわりと舌全体に広がる味わいなど、温めたからこそ出逢える、お酒の新たな一面を発見できます。
弊社では、そんな燗酒の面白さを多くの方に知って頂こうと、「黒龍」「九頭龍」を別のブースで設置出来る大きなきき酒会では、「九頭龍」3種(大吟醸、純米、逸品)を、冷酒、ぬる燗~上燗(40~45℃)、熱燗~とびきり燗(50~55℃)の3タイプの温度で提供しています。
先月のきき酒会でもこの方法で「九頭龍」をお出ししたところ、一般のお客様も飲食店様も、温度によるお酒の味の違いに驚かれていました。各商品のおすすめの温度帯や、上手なお燗のつけ方などを興味津々にお尋ね下さる方もいて、昔ながらの日本酒の楽しみ方である「燗酒」に、確かな手ごたえを感じています。
霜降(そうこう)《二十四節気》
10月23日は、「霜降」
秋が一層深まり、朝晩の冷え込みが厳しくなります。
山は紅葉、富士山では初雪が観測される時期です。
冬の支度も始めます。
日本酒を飲んで秋の夜長を楽しみましょう。
お客様をつなぐ黒龍の「真田紐」
2016年も残すところあと1ヶ月。冷え込みが少しずつ強くなり、蔵内では寒造り本番を迎えようとしています。
さて、年末が近づき、NHK大河ドラマ「真田丸」も残り僅かとなりました。第39回「歳月」では、九度山(くどやま)にて蟄(ちっ)居中(きょちゅう)の真田幸村が発案した「真田紐」が登場しました。「真田紐」は、縦糸と横糸で平たく紐状に織られ、伸び難く非常に丈夫でかたいのが特長で、当時は荷物紐や武具、馬具などに使用され、江戸時代に入ると茶道具の桐箱の結び紐や帯締め、帯留めに使われていたそうです。
この「真田紐」、実は弊社の極みの酒「黒龍 石田屋」、「黒龍 二左衛門」の化粧箱を結ぶ紐としても使用されています。この丈夫で強い紐は重さにも強く、越前漆器の風合いにも合う紐のデザインが極みの酒ならではの上品さを演出しています。
こだわりぬいたお酒が美しい意匠をまとい、越前漆器の化粧箱に納められた後、一つ一つ真田紐が結ばれてゆきます。これがお客様に届く最後の工程。手をかけた商品がお客様と結ばれることを思い浮かべながらの手仕事です。